9月末、生物多様性国家戦略(2012~2020)が閣議決定されました。生物多様性条約批准国として国が策定する同戦略は、1995年に第1次戦略策定、その後4回の改定を経て今回は第5次の戦略です。その第一次戦略の時代、鶴見川流域では同戦略地域方策策定のモデル事業として、流域を枠組とした「生物多様性保全地域モデル計画( 鶴見川流域) 」(1998)が、環境省、関連自治体、国土交通省京浜河川事務所、TRネットの協働によって策定・試行されたのでした。しかし成果は二次以降の国家戦略に採用されず、2004年以降「鶴見川流域水マスタープラン(水マス)」の自然環境マネジメントに引き継がれて今日にいたりました。その歴史が変る気配。
今回の戦略も、里地・里山思考重視の点では2次以降の戦略と同主旨ですが、東日本大震災を契機として日本列島に自然共生社会を創出するためのグランドデザインへの貢献も期待される計画として、このたび、
- 奥山自然地域
- 里地・里山・田園地域
- 都市地域
- 河川・湿地地域
- 沿岸地域等
の国土の基本地域区分が、<流域圏の構成要素>と明解に規定され、流域視野の生態系管理がうたわれているからです。基本思想は、「生物多様性保全地域モデル計画(鶴見川流域)」、「鶴見川流域水マスタープラン」そのまま。忘却の15年を経て、鶴見川流域におけるモデル計画の実践は、いま、国家戦略に到達します。ちなみに今後の基本戦略として新国家戦略は、
- 生物多様性を社会に浸透させる
- 地域における人と自然の関係を見直し・再構築する
- 森・里・川・海のつながりを確保する
- 地球規模の視野を持って行動する
- 科学的基盤を強化し政策に結びつける
の5項目を掲げました。もちろん<地域>の見本は流域で良し。TRネットが推進する流域ベースの環境保全活動が、水マスタープランの自然環境マネジメントが、生物多様性国家戦略の主旨に100%合致した実践・計画であると正しく再評価される時代、開かざるべからず。日々、水マスを応援し、近くはヨコハマbプラン、エコシティー高津、町田源流保全に、遠くは第5次の国家戦略にも呼応しつつ、TRネットはわれらが流域思考を進めるばかり。流域を復活させつつある環境省の志に、バクの形の流域から、まずはエールを送りましょう。
npoTRネット代表 岸由二