ワースト報道の呪縛から解放されるためには、水の性質を把握する尺度がいろいろあることを知っておくことも重要だと思います。有機物の含量を把握するには、BODやCODなどの尺度があります。燐、窒素、重金属、各種の合成化学物質、病原生物をふくむ微生物の組成、魚類、甲殻類、植物などの水生生物の多様性、透明度、におい、色など、川の水の性質を把握するための特性や尺度は、本当に多様です。BODはその多様な尺度の一つにすぎません。
私たちは、これらの特性や尺度を、水質を評価するために利用します。その際、どんな目的のために水質を評価するのかによって、注目すべき特性や尺度を選ぶというのが理屈でしょう。水道水源としての水質を評価するのであれば、有機物にせよ、他の化学物質にせよ、含有物質の少ない水、病原生物の混入のない水が良い水ということかと思われます。農業用水としての水質を評価するのであれば、燐や窒素成分がある程度含有されることは、マイナスではないでしょう。水生生物の多様性や豊富さを問題にするなら、栄養物資のない清浄なばかりの水は時には大きなマイナスということになりそうです。十分な溶存酸素が維持されていればある程度のBOD値を示す水の方が、豊かな生物相を支えるということもあるはずですね。
典型的な都市の川・鶴見川の水を、私たちはどのような水として評価したいのか。飲み水としての水質を期待するのか、色や臭いが問題なのか、生きものたちが賑わい子どもたちが安全に遊ぶことのできる水質をめざすのか等々。まずは、改めてそれを問題にすべきなのかもしれません。