ワーストワン(2002年度)報道で、「鶴見川は全国の川の中で水質が一番悪い川」と思いこんでしまった市民がたくさんいます。これは誤報あるいは不十分・不適切なデータ提供に基づいて形成された思いこみの印象です。
国土交通省の発表は、「BODで比較すると鶴見川の水質は国の管理する全国の一級河川166本の中でワーストワン」という内容です。思いこみ形成の原因の一つは、この報道の<国の管理する全国の一級河川166本の中で>という部分が<全国の川の中で>と誤解されて再報道、あるいは口づてされてしまっていることです。
さらにいうと、<国の管理する全国の一級河川166本の中で>という限定自体も、不適切なデータ提供という性格を持っています。<国の管理する全国の一級河川166本>は、日本列島に流れるすべての川のうちのどのくらいの部分にあたるのかがわからなければ、<国の管理する全国の一級河川166本の中でワーストワン>といわれても、それが日本の川全体の中でどのくらいの順位の水質なのか、比較の手がかりがありません。
行政の資料を調べてみると、全国には一級水系が109水系あります。その水系の中に、一級河川に指定されている流れの区間が、平成14年の時点で13,987本あるとされています。その中から、国の水質測定点が2箇所以上ある一級河川(の区間)だけをえらんだのが、ワースト報道で言及される一級河川166本と説明されています。これは一級河川全体の1.2%にすぎません。鶴見川のBODは全国13,987本の一級河川の中でワーストワンというのではないのですね。
日本の川は一級河川ばかりではありません。京浜河川事務所の「鶴見川ってなんだろう」(2003)によれば、我が国には、上記の一級河川のほか、二級河川6,897本、準用河川19,113本、普通河川188,000本、指定河川(北海道・沖縄)36本があるとのこと。少なくとも全体で22万8千本を超える川があることになります。
166本の川の中でワーストワンとされた鶴見川は、22万8千本の日本の川のワーストワンと指摘されているのでは全くないということが、良くわかります。<鶴見川の水質は全国22万8千本の河川の中から選ばれた一級河川166本の中でワーストワン>と最初から報道されていたら、新聞記事にもならなかったかも知れませんね。思いこみとデータに大きなずれがあることを知ることは重要です。