鶴見川は町田市北部の源流に発し、多摩丘陵・下末吉台地を刻み、横浜市鶴見区生麦で東京湾に注ぐ一級河川です。本流全長はマラソンコースとほぼ同じ 42.5キロメートル。恩田川、早淵川、矢上川などの支流が合流して鶴見川水系を構成しています。流域は、横浜、川崎、町田、一部稲城市に広がり、京浜工業地帯の中心部や港北ニュータウン、新横浜、多摩田園都市などの新興都市群を擁しています。面積235平方キロメートルの流域は、2003年時点で、既にその85パーセントが市街化され、 188万人の流域市民が暮らしています。
鶴見川源流域
鶴見川の源流流域は、町田市北部の多摩丘陵に、広がっています。源流の谷には「泉の広場」があり、流域交流の拠点として親しまれています。泉に発する小川には、ホトケドジョウやハヤなど、清流の魚が暮らしています。護岸整備とともに多自然型の川づくりが進む下手の流れには、町田の市の鳥に指定されたカワセ ミたちの姿があります。
丘陵の森は、広大な保水域として、中下流の洪水抑制にも寄与しています。田畑や団地を包む森には、キツネやムササビ、オオタカも暮らしています。その一 角の都立小山田緑地では、毎年春、「鶴見川源流祭」が開催されます。町田市は、市域の70%が鶴見川の流域という、文字通りの「鶴見川源流都市」。暮らし の基盤を整備しつつ、鶴見川源流の清流と緑をまもる工夫が、続いています。
(源流流域の流域面積は32.3平方キロメートル、平成11年時点で10.7万人が暮らし、市街地率は62.8%です)。
鶴見川上流域
上流流域は、麻生川の合流点付近から、恩田川の合流点にいたる約9キロの本流区間に、雨の水が集まる流域です。この区間の流れには、オイカワやコイの群れ る姿があります。近年は市ケ尾付近までアユも遡上しています。市ケ尾の流れでは、毎年夏、イカダまつりが開催され、多くの子どもたちが鶴見川に親しみはじ めています。流れを包む流域には、支流である麻生川の流域に当たる川崎市麻生区の中心部や、横浜市青葉区の中心部がふくまれています。一帯の丘陵地には、 多摩田園都市の中心的な市街地が広がっていますが、水田と雑木林のなつかしい風景に包まれた近郊リゾート・寺家ふるさと村や、溜め池の散在する雑木林に包 まれた早野聖地公園など、緑と安らぎの拠点も配置されています。(流域の全面積は31.9平方キロメートル、市街化率は67.5%に及び、流域人口は 20.6万人に達しています)。
鶴見川中流域
中流流域は、恩田川合流点から早渕川合流点にいたる9.5キロの本流に、雨水が集まる領域です。大きな蛇行の残る流れには、コイやフナとともにアユも暮らし、サギやカワセミの姿もあります。広い高水敷はこの区間の特徴です。オギやアシの茂る草原は、ヨシキリや セッカの繁殖地にもなっていました。流れを包む流域には、都筑、港北、緑区の一部が含まれます。北部には大熊川流域の農業地帯と雑木林が広がっています。 南部には、鴨居、小机、新横浜、菊名など、横浜線沿線の市街地が連なります。川沿いの広い平地には、鴨居、新羽、新横浜など商工業の地域が展開します。新横浜多目的遊水地はこの流域の一角に建設されました。アユの生息拠点でもある周辺の流れや高水敷を含め、未来の鶴見川流域における最大の交流・学習拠点となってゆくことでしょう。(流域の面積は34.0平方キロメートル。22.8万人が暮らし、市街化区域は66.7%です)。
鶴見川下流域
下流流域は、港北区綱島の早渕川合流点から、鶴見区生麦の河口にいたる、延長9km程の本流に、雨水が集まる領域です。綱島付近の流れには、上げ潮にのっ てマハゼやボラがやってきます。昨年夏、アゴヒゲアザラシが登場した水辺の自然拠点、バリケン島も有名です。下手ではプロムナードや公園の整備が進んでい ます。築堤工事に合わせて、河口の干潟保全も実現します。流域は、横浜市港北区、横浜市鶴見区、川崎市幸区に広がります。西と北の台地域では、獅子ケ谷、 三ツ池、綱島の丘、夢見ガ崎など緑の拠点も有名です。流域の大半を占める低地域には、鶴見川流域最大の市街地が広がります。かつて鶴見川は暴れ川と呼ば れ、中流流域とともに下流流域も度重なる洪水の被害に見舞われてきました。総合治水の推進で、洪水の危機は緩和されています。多目的遊水地の完成は、下流 流域における街と川のかかわりを、さらに一歩、優しいものにするでしょう。(域の面積は28.6平方キロメートル。市街化率は93.6%と矢上川流域に次 ぐ高さとなっており、35.7万人が暮らしています)。
恩田川流域
恩田川は、町田市の七国山の南斜面を源流とし、横浜線中山駅の北で鶴見川本流に合流する、全長約14kmの、鶴見川水系最大の支流です。この流れに雨水の 流れ込む地域が、恩田川の流域です。源流は街に囲まれていますが、湧水が豊富なため、ホトケドジョウやオイカワなど水生生物も豊富です。行政と市民の連携 した川辺ビオトープづくりも進んでいます。横浜市域の流れには、奈良川、岩川、梅田川などの支流が合流し、沿川にはまだかなりの田畑がのこされています。 恩田川流域は、東京都・町田市、横浜市・青葉区、横浜市・緑区に広がっています。流域の大半を占める多摩丘陵の領域には、大規模な住宅地が広がると同時 に、こどもの国、新治・三保、四季の森など緑の保水拠点も健在です。(面積46.7平方キロメートルの流域は、74.3%が市街地化されて、35.6万 (住民基本台帳)の流域市民が暮らしています)。
鳥山川流域
鳥山川は、横浜市神奈川区羽沢の丘を源流地として下末吉台地を北東に刻み、港北区との区境で支川・砂田川に合流します。支川の砂田川は、神奈川区・保土ケ 谷区・緑区の3区が接する谷に源流をもち、下末吉台地を東に流れて鳥山川に合流します。この2本の流れに雨の水の集まる範囲が、鳥山川の流域です。鳥山川 の水系は護岸の整備が進み、水辺との接触はやや困難ですが、下流部にはオイカワの産卵域なども確認されていて、親水整備や、水辺の植生の回復なども試みら れています。下末吉台地のなだらかな斜面の目立つ流域には、住宅地と農地が広がり、そのほとんどは、横浜市神奈川区に属しています。(鳥山川流域は、面積 8.1平方キロメートル、市街化地域の相対面積波45.5%と、亜流域群の中で最も低く、流域人口は6.4万人です)。
早渕川流域
早渕川は、横浜市青葉区美しが丘を源流とし、綱島で鶴見川本流に合流する、長さ約14kmの支流です。源流域は市街地に覆われ、清流の姿は認められません が、中流部の流れは水量も多く、アユやオイカワ、さらにマルタウグイなどのすがたがあります。下流部の川辺では、流域の小学生たちによる、総合学習の実践 も進められています。流域は、横浜市青葉区、都筑区、港北区の一部に広がっています。その大半を占める丘陵地には、緑のネットワークと、港北ニュータウン の市街地が広がります。丘の街。川辺の農地。そして早渕川の流れ。これらをどのように繋いでゆくか。早渕川流域には、水と緑の大きな夢が残されています。 (面積24.6平方キロメートルの流域は、79.0%(平成11年推定)が市街化されており、17.9万人(1999年度住民基本台帳)の流域市民が暮ら しています)。
矢上川流域
矢上川は、川崎市宮前区の菅生緑地付近に発し、横浜市港北、川崎市中原、川崎市幸(さいわい)の3区が接する矢上地域で、二か領用水の分水である渋川と合 流したのち、鷹野大橋上手で鶴見川本流に合流する、長さ14kmほどの支流です。その流れの、渋川合流点より上手の部分に雨の水の流れ込む領域が、矢上川 の流域です。矢上川の源流域は市街地化が進み、すでに清流の姿はありませんが、開発の中で源流の谷の自然を回復する行政・市民・企業の連携努力なども進ん でいます。湧水が合流することもあり、下手の流れにはオイカワやアユの姿があります。改修ずみの流れの一部に多自然型の流れを回復する計画も進んでいま す。流域のほとんどが市街地化されていますが、支流有馬川の流域や、井田、慶應日吉キャンパス周辺などに、湧水や緑の拠点が残されています。流域の行政区 は、本川に沿って上手から川崎市宮前区、同・高津区、同・中原区が並び、流域の南縁部に帯状に横浜市港北区の領域が配置されています。(流域面積は、面積 28.7平方キロメートル、市街地の相対面積は96%と、鶴見川の亜流域では最大の率に達し、流域人口は35.4万人に達する過密都市流域です)。